ウイルスとは? 菌との違い

新型コロナウイルスが世界的に流行しており、ニュースでも連日報道されています。そして時々おかしな言葉を目にしたり聞いたりします。

例えば

「コロナ菌」

「新型コロナウイルスを殺菌」

「新型コロナウイルス除菌液」

など・・・

その度に内心「いや、菌じゃなくてウイルスでしょ・・・」と思っていました。

そんな時、免疫学の研究者が専門用語を使わずに生物学の基礎を解説しているわかりやすい動画を見つけたので、思わず紹介することにしました。

(内容)

細胞:設計図(DNA、RNA)と工場(設計図を用いて自分と同じものを作るための仕組み)を持っている。

ウイルス:設計図の断片(DNAまたはRNA)は持っているが、工場はない(自ら増殖することはできない)。大きさは細胞よりもずっと小さい。

→自力で増殖できないウイルスは、細胞の中に潜り込み、細胞の工場を利用して大増殖しようとする。

(蛇足)

すべての生物は細胞からできています。人間などの動物や、草や木などの植物は「多細胞生物」に分類され、多数の細胞からできています(人間は60兆個の細胞からできていると言われている)。逆に、一つの細胞だけからできている生物を「単細胞生物」といいます。

「菌」は「細菌」と「真菌」に分けられます。細菌はDNAが核膜に包まれていない原核生物であり、単細胞生物であることが多いです。食中毒を起こすO-157などの大腸菌も細菌の一種です。真菌は、人間などの多細胞生物と同じように、DNAが核膜に包まれている真核生物です。代表例はカビ、酵母菌、キノコですが、カビとキノコは多細胞生物、酵母菌は単細胞生物です。

(内容)

ウイルスはそのままでは細胞内に侵入することができないので、細胞が他の細胞とコミュニケーションを取るときに使っている情報伝達システムを利用します。

情報を送信する側の細胞は「かぎ」のような物質を作り出します。一方、細胞の表面には様々な種類の「かぎ穴付きセンサー」があります。「かぎ」が自分にぴったりな「かぎ穴付きセンサー」を見つけてささると、センサーが細胞内に信号を送ります。これが、細胞の情報伝達の仕組みです。

このようなセンサーの中には、信号を送った後に、細胞内に吸い込まれて吸収される種類があります。ウイルスはこのセンサーを利用して細胞内に侵入するために、ウイルスのとげとげ部分に、このセンサーのかぎ穴にぴったり合う「かぎ」を作り出しました。

→ウイルスはこのかぎを使い、センサーごと細胞内に吸い込まれることで、細胞内に侵入することができる。

(蛇足)

新型コロナウイルス(SARS-CoV-2)の持つ「かぎ」にぴったりな「かぎ穴付きセンサー」(アンジオテンシン変換酵素2(ACE2))は、人間の場合、鼻の奥の細胞に多く存在しています。そのため、新型コロナウイルスの主な感染経路は鼻の奥であり、合唱クラブやスポーツジムなど、大勢の人が密集して発声したり、運動して呼吸が荒くなったりする場所でクラスターが発生しやすくなります。感染の初期の症状がほとんどない時期から鼻の奥でウイルスが増殖するので、PCR検査では鼻の奥の細胞を採取して調べます。

(動画の続編)

③ーウイルスは細胞内でどう増えるの?ー

 

(動画チャンネル)

新妻免疫塾 K&L Immunology Club