Lockdowns failed to alter the course of pandemic and are now destroying millions of livelihoods worldwide, JP Morgan study claims
2020年5月22日
要旨
- JPモルガンの調査によると、ロックダウンが緩和されて以来、感染率は下がり続けている
- そのことから、新型コロナウイルスにはロックダウンとは無関係な何らかの機序があると思われる
- 報告書によると、ロックダウンは経済的打撃についてあまり考慮することなく課された
- Covid-19により影響を受けた人を救済する方法はこちら(イギリス)
本文
新型コロナウイルス感染拡大防止のためのロックダウンは感染拡大防止には効果がなかったが、その代わりに「数百万人の生活を破壊した」とJPモルガンの調査によって主張されている。
ロックダウンが解除されて以来感染率が下がっていることから、新型コロナウイルスは大抵の場合一貫性のないロックダウンの手段とは関連のない独自の機序を持っているようだ、と金融サービスの巨人が公表した報告書において述べられている。
デンマークは学校やショッピングモールが再開した後も実行再生産数(R rate)が低下し続けている国の一つであり、ドイツの実行再生産数はロックダウン解除後も大部分が1.0以下のままである。
報告書はさらに、アラバマ州、ウィスコンシン州、コロラド州を含む多くのアメリカの州でロックダウン解除後の方が実行再生産率が低くなっていることを示している。
訓練された物理学者でありJPモルガンのストラテジストである執筆者のMarko Kolanovic氏は、各国政府は「欠陥のある科学論文」に焚きつけられて、非効率で既に時期を逸していてほとんど効果がなかったロックダウンを行ったのだろうと述べた。
「新薬の厳格な試験とは異なり、ロックダウンは経済的打撃だけではなく、潜在的にCovid-19自体が引き起こすよりも多くの死の原因となるのではないかということがほとんど考慮されずに行われてしまった。」とKolanovic氏は主張した。
(表にはR0とありますが、「基本再生産数(R0)とは、ある感染症に対する免疫をもたない集団が初めて病原体に暴露した場合の感染症の感染力」なので実行再生産数ではないかと思いましたが…実際の値とは別の理論上の値ということでしょうか。)
そのJPモルガンの報告書にはロックダウン解除後に「大多数の国で感染率が下がった」ことを示すグラフが含まれている。
新規の感染症が可視化されるまでの遅滞期を考慮しても感染率は下がり続けている、と報告書は述べている。
2番目のグラフはアメリカにおける同様の事態を示したもので、多くの州において全面的なロックダウンが終わった後の方が感染率が低いことを示している。
グラフを見ると、全ての州は含まれていないが、コロラド州、アイオワ州、アラバマ州、ワイオミング州、ウィスコンシン州、ミシシッピ州は含まれている。
ネバダ州とノースダコタ州は通常の生活に戻ってから感染率が上昇しているので、例外に属している。
実行再生産数(R)は一人の感染者が概ね何人に感染させるかを示しており、R1.0未満を感染が縮小していることを示す重要な指標だとみなしている国もある。
「ロックダウンは科学的モデルによって主導されたもので、経済活動レベルとウイルスの拡散には確かな関連があるとたびたび聞かされているが、実はこのことはデータによって裏付けられているわけではない。」と報告書は述べている。
「実際は、適切な測定ラグを考慮に入れた後でも、ほとんど全ての場所で感染率は下がっている。」
「この感染爆発とCovid-19には、一貫していないことが多いロックダウンの手段とは関連のない独自の機序があるということだろう。」
その機序は手洗い実施率の上昇やさらには天候に影響されているかもしれないが、全面的なロックダウンの影響を受けているようには見えない、と報告書は示唆している。
「ロックダウン後の活動の再開が感染拡大につながっていないという事実は、全面的なロックダウンが感染拡大防止に効果がないと示している研究と一致している。」
以前オックスフォード大学のある教授は、イギリスはBoris Johnson首相が3月23日にロックダウン を指示する前に既に危機のピークを脱していた。」と示唆していた。
Carl Heneghan教授は先月、新規感染者数のピークは4月8日であり、感染拡大のピークは3週間前の3月18日あたりだったのではないかと述べた。
JPモルガンの分析では、ロックダウンを課すという決定は、西側諸国に数百万単位の死者が出ると予測する「欠陥のある科学論文」と結びついていると結論づけている。
「これは奇妙な予測である、中国では死者数はたったの数千人で、武漢以外での死亡率はとても低いのだから。」
「確実な科学的データがないときにロックダウンは即座に正当化された。それでもやはり、これらの努力の多くは無駄が多く、遅すぎた。」
研究によると、ヨーロッパのいくらかの国ではロックダウンという手段は「実行再生産数のような感染爆発に関するパラメーターに何の変化ももたらさなかった」とJPモルガンの報告書は述べている。
Kolanovic氏は「我々のウイルスや全面的なロックダウンの効果のなさに対する知識が増えて」もなおロックダウンが続けられている、と言う。
「同時に、数百万人の生活がロックダウンによって破壊されている。」
ロックダウンを行っている国々では数百万の人々を失業に追い込む経済の停止に対応するために、国家予算に巨大な穴が空いて打撃を受けている。
さらに報告書では、「不安感を煽るポピュリズム」が経済活動の再開の障害になっていることに言及している。アメリカの例で言えば、今週上院で中国に対抗する法案が通過したことだ。
報告書では共和党支持者の州知事と民主党支持者の州知事が州ごとに異なる戦略を取るため、アメリカの経済活動は「現在大部分が地域住民の支持政党を反映したものになっている」。
報告書では第一にロックダウンの有効性に疑問を投げかけているだけではなく、経済活動の再開がもっと迅速に可能であることも示唆している。
デンマークは感染が急上昇することなく経済活動の再開を始めている国の一つだ。
デンマークでは動物園、博物館、映画館は早い段階から再開しており、科学者が実行再生産数が下がり続けていると示してから子供たちの登校も再開された。
ドイツでは各種制限の解除の後に実行再生産数がほぼ1.0を下回っていることから、ロックダウン を縮小する政策に自信を持っている。
しかし、Angela Merkel(メルケル)首相は、感染拡大の第二波が医療崩壊を引き起こす恐れがあることを繰り返し警告し、注意を促している。
イギリス政府も同様に「突然かつ憂慮すべき規模」の新規感染者数の増加があれば制限がまた課されることがあると警告している。
WHOは、ウイルスの感染拡大が再燃する危険は常にあるのでロックダウンの解除には極度の警戒が必要だと主張している。
WHOのTedros Adhanom Ghebreyesus(テドロス)事務局長は、ドイツや韓国のような国は第二波に備えたシステムを既に配備していると言った。
しかし、イギリスの感染者追跡システムは必要なアプリの展開の遅れによって導入が進まない状態になっている。
テドロス事務局長は、少なくとも何ヶ月も先になるであろうワクチンの実用化が実現されるまでは、一連の包括的な対策が必要だと述べた。
どれほどの人が既に感染していてどの程度まで感染者が免疫を獲得したのかについてはまだはっきりとはわかっていないが、多くの人は感染しやすいままだろう。
オックスフォード大学で行われているものを含めて、既に人間での臨床試験を開始しているワクチンの開発プロジェクトもいくつかある。
1,102人もの治験参加者がオックスフォード、サウサンプトン、ロンドン、ブリストルの研究機関に集められたが、結果が出るのは数週間後になるだろう。
インペリアル・カレッジ・ロンドンもワクチン候補の開発を進めており、6月中旬までに臨床試験に入り、10月には大規模な治験を行う予定だ。
しかし、専門家と政治家は、効果的なワクチンが実用化される保証はどこにもないと警告している。
もしワクチンが実用化されたとしても、世界的な感染拡大を終息させるのに十分な量の供給をどのように確保するのかという懸念が残っている。
翻訳元記事
画像は翻訳元記事より引用
関連リンク
JPモルガンの報告書(pdf)
Market and Volatility Commentary Political risks of pandemic, data favors further reopening