アフリカにおけるCOVID-19:自己満足の余地はない

COVID-19 in Africa: no room for complacency

2020年5月30日

100,000件以上の感染例が確認されており、どの国でも感染者が出ているにもかかわらず、アフリカ大陸でのCOVID-19の経過はやや不可解である。この地域では脆弱な医療システム、予防策を取れる環境にないこと、検査のしにくさ、潜在的に病気にかかりやすい人口の多さから死亡者数が多くなるのではないかと予測されていた。しかし、WHOによると、アフリカは世界的に見て最もCOVID-19の被害を受けていない地域であり、アフリカの感染者数は世界の感染者数の1.5%、死亡者数は0.1%に過ぎない。これらの比較が不正確だとしても、死亡率は世界の他の地域の同程度の大きさの感染者集団のものよりも低い水準でありつづけている。この矛盾に対して、ウイルスの周囲温度に対する感受性、アフリカの人口構成が他地域よりも若いこと、肥満率の低さ、感染症の爆発的流行に慣れていることなど、多くの仮説が提唱されてきた。検査率の低さによって見かけ上の感染率が人為的に低くなっているかもしれない。アフリカ大陸の状況は非常に不均一であり、発展状況もずいぶんと異なっている。

2020年2月時点で他の多くの国では未知の感染症の出現が否定されていたが、アフリカ連合は迅速に行動を開始し、WHOと共に大陸連合型戦略を承認していた。アフリカ疾病管理予防センター(The Africa Centres for Disease Control and Prevention)は2月の終わりまでにCOVID-19の検査能力を相当な程度拡大していた。アフリカの多くの国は迅速に行動し、ロックダウンや国境閉鎖を行った。しかし、これらの厳格な規制を行うのは容易ではなかった。人権団体は南アフリカで行われたものを含む警察や軍による暴力的なロックダウンの実施に対して懸念を表明していた。71%のアフリカ人が非公式部門で働いており、その多くが経済的な蓄えがない。ガーナ、ウガンダ、ケニアなどの国は物資を配給するための緊急プログラムを開始し、ナイジェリアは最も弱い立場の人々への経済的支援を提供している。潜在的な食糧不足、社会不安、経済崩壊を天秤にかけて、マラウイとガーナを含む国々はロックダウンを行わないこと、または部分的な実施に留めることを選択した。これらの多様な戦略の結果を十分に理解するにはもっと時間が必要だが、何週間も感染者数が公表されず、John Magufuli大統領によって効果が科学的に証明されていない薬草療法が推奨されたタンザニアの対応はほぼ普遍的な懸念の対象となった。

自己満足の余地はない。アフリカで感染拡大抑制に失敗すれば、すぐに医療崩壊が起こるだろう。しかし、新型コロナウイルスのみに集中した対策を取れば、苦労して発展させてきた他の分野が脅かされるだろう。この世界的な感染爆発の結果として、チャド、エチオピア、ナイジェリア、南スーダンなどの国で定期予防接種が中断されることになり、1歳未満の8,000万人の子供たちが世界的にワクチンで予防可能な病気に罹患する危険に晒されるかもしれない。COVID-19対策に集中するあまり、他の分野の公衆衛生が損なわれてはならない。コンゴ民主共和国で予防接種キャンペーンが中断されたことによって、エボラ出血熱によるものよりも多くの命が失われるかもしれない。アフリカ大陸全土でこのようなことが繰り返されることは避けなければならない。新型コロナウイルスの世界的流行により、特定の狭い分野に対する対策よりも、国民皆保険の方が重要であることがより強調されるはずだ。

アフリカ大陸地域としては強力な対策を取っていても、世界規模の新型コロナウイルス流行による悪影響から、死者数と経済的混乱を最小限にとどめるためのアフリカの能力的容量が阻害されることがあり得るだろう。国境の閉鎖、国際便の運行停止や供給網の乱れ、輸出制限により、アフリカ諸国の個人用保護具、診断に必要な物資、食糧の入手が困難になり、感染拡大と飢饉の危険が高まる。セネガルでは安価な診断検査を開発し、ガーナでは現地でのマスクの供給を可能にするなど、多くの国が独自の対策を行っている。国連が推奨しているヘルスケア製品への関税の一時停止、供給網の確立、食糧輸出制限の緩和などの措置が迅速に実行されなければならない。世界銀行は、年末までに6,000万人もの人々が極度の貧困状態に陥るだろうと概算している。世界市場の変化は原油や観光分野を含めた輸出に影響を及ぼし、アフリカに重大な衝撃を与えるだろう。国連事務総長は、広範囲に及ぶ債務の停止からアフリカの経済回復支援のための構造改革までの、一連の世界規模の包括的な対策の必要性を訴えた。

アフリカでは、特に厳格なロックダウンを緩和し始めた国において、依然として大惨事につながる恐れはある。COVID-19の世界的流行は世界の力関係を一層強化している。他の国々は効果的で安全な対策を支援し可能にする役割を担っているが、アフリカには独自の難しさがあるのと同様に独自の強みもある。他国と協力しての成功もあれば効果的な地域別の対策もあった。今後の活動はアフリカ主導で行われるべきであり、他国はアフリカから何が学べるかを見ているべきだ。

翻訳元記事

COVID-19 in Africa: no room for complacency

関連リンク

開発途上国のインフォーマルセクター・経済・雇用に関する用語解説

低中所得国の大多数の人々が非公式経済で生計を営んでいる。こうした人々は課税を回避できる一方、法が定めた労働基準や社会保障制度によって保護されない状況にある。

https://www.povertist.com/ja/informality/